英国のカントリーサイドめぐり

ウェールズのブレコン・ビーコン国立公園にて Brecon Beacon

遥か遠くにブラックマウンテンが見えている。

やっとブレコンの山頂に立つことができた。

視界を遮るものがなくかなり遠くまで見渡せる。

眼下には霞に包まれたブレコンの町が見えている。

一緒に登ったフィルは、一眼レフカメラを取り出しシャッターを切り続けている。

他の仲間たちもその景色に感動して、雄叫びを上げている人もいる。

女の子の中には、高所恐怖症の人もいて景色を一目見て卒倒してしまい、頂上の真ん中で泣きながら地面にしがみついている。


標高800m強のブレコンの山は、日本の北アルプスのように鋭い剣先のように聳え立つ山ではなく、なだらかな曲線を大きく描いたような丘陵だった。

その丘陵は、麓から20mも登ると背の高い木はなくなり、ヒースや草のみとなる。


ブレコン・ビーコンズ国立公園内にあるPen-Y-Fanという山。この辺りは、ムーアと同じような景色が広がっている。ムーアは、土質が乾いた砂であったり、酸性土壌であったりするためヒースやゴースなど生息できる植物が限られてしまう。

それらの背の低い植物が何キロにも渡って這うように茂っている。そこは、不毛の土地であり「荒野」と表すのが適当だと思った。


ウォーキングの仲間たちと一緒に登った。山の麓から頂上までほぼ一直線の登山道を歩く。登山に慣れていない人もいてペースはゆっくりだった。30分ごとに休憩を取り水筒に入れておいた紅茶を飲み、一息入れては登るというのを繰り返し、頂上を目指した。


途中、この近辺に住むおじさんが登山道を修復していた。おじさんは、登山道の砂が落ちていくのを防ぐために約2m間隔で石を埋め込んでいた。

「乾いた赤土が、足跡の数だけザザァーと落ちていくのだよ。風が吹くと目を開けられないほど砂が舞い、砂は下へ下へと向かっていく。さらに、雨が降ると多量の砂が押し流されていく。

登山道以外は、草が地中に根を張っているのでそれほど風化が激しくないが、登山道は、ひどいものだよ。だから、このように登山道に対して垂直に石を埋め込み、落ちてくる砂を堰き止めている。登山道が整備されていないと登山道の風化がその周りにまで及び、植物たちの根を掘り起こし枯らしてしまう恐れがあるからだよ。

では、なぜここに生えているヒースや草などを守るのかというと、それには意味がある。


ヒースなどは、小さな動物の棲み処になっていてここには約5,000種類もの生物が棲んでいると言われている。場所によっては、鳥が巣を作っているところもある。もちろん、ヒースなどのようにこの土地でしか見られない特有の植物を守っていくのは当然のことだろう」

おじさんは、1人でその作業をしていた。でも、登山者がここを通るたびに立ち止まり、話しかけるのでさびしくはないが、ぜんぜん作業がはかどらないのだと言って笑った。


おじさんと別れ、仲間たちと頂上に向かう。頂上が近づくにつれ、風が強くなってきた。3時間かけて頂上にたどり着いたとき、ピークに達していた疲れは吹き飛んだのだった。

風はさらに強さを増しているが、仲間たちの顔からは笑顔がこぼれていた。


男たちは、もう一歩足を出すと下に落ちてしまいそうな頂上の端に立ち、腰に手を当て、物思いにふけた表情をして遠くを眺めている。


女たちは、座れそうな場所を見つけてみんなで輪になって座り、紅茶やビスケットを食べておしゃべりをしていた。


記念写真を撮って下山した。

下山の途中、ブレコンの裾野に沈む真ん丸い太陽が見渡す限りの大地を夕焼け色に染めた。

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